199700816 of Yasushi's Life


ユーザーサポートとパソコン価格 (August 16, 1997)

ご存知のとおり、この2、3年のパソコンの売れ行きはものすごい。正確な販売台数の数字などは知らないのでなんとも言えないが、猫も杓子もパソコンとインターネットという言葉に踊らされているのは間違いないだろう。そのパソコンの販売価格であるが、数年前と比較すれば性能価格比は想像を絶する勢いで向上しているし(この辺りの経済学的インパクトについては白塚さんの論文を参照してほしい。)、実際の価格自体も2、30万円台とお手軽な水準へと低下している。

価格下落によってパソコンの購入層は大幅に広がった。私の家の近くの大型スーパーでさえパソコン売り場を設けてパソコン本体、モデム、プリンター、ソフト販売をしている位である。今まで一度もパソコンなるものに触ったことが無い人も、パソコン&インターネット強迫観念症候群(パソコンとインターネットを使えないと世間から取り残されるのではという強迫観念)から、パソコンを手に入れるべく秋葉原とスーパーに駆け込む時代だ。

しかし、残念ながらいまだパソコンは家電製品と言えるほどその操作性能がFool Proofになっていない。一言で言ってしまえば誰にでも全くのトラブル無く使える代物ではないのだ。その理由は、まだパソコンが発展途上の商品であるからであり、作っている側も訳もわからずに売り出しているという状況にある。まあ、それはそれで性能自体が向上する過程なのでしょうがないと、ある程度の経験を積んだユーザーは割り切ることができるが、初心者の人はたまったものではない。

買ったけれども使えない。妙な警告文が出てきて、動かない。マニュアルを読んでみても日本語とは思えないし、何が書いてあるのかさっぱりわからない。インターネットに接続しようと一晩がんばってみても「接続できません」とつれない表示が出る。買ったソフトのインストールも何だかうまくいかないし、新しく周辺機器を買ってきて取り付けてもプラグアンドプレイが認識せず、BIOSを変更しないといけないらしい・・・・などなど。コンピューターを使いはじめて16年近くにもなる私でさえ時々訳がわからなくなるのだから、パソコンを購入して1週間の人がまともにパソコンを使いこなせるはずがない。

そこでパソコンメーカー、インターネットプロバイダー、周辺機器メーカー等のユーザーサポートラインに電話をかけることになるのだが、これがお話中でつながらないようだ。そりゃそうだろう。台数は売れている、製品はそもそも誰にでも使える仕様になっていない、買っているのは初心者ばかり。こうなればユーザーサポートには電話の嵐が押し寄せるのは誰にだって想像できる。「じゃぁウィンドウを開けてください」と電話で言われて、窓際へ行って家の窓を開けるような初心者ユーザーに電話でサポートを提供していると思えば、件数だけでなく一つ一つの説明に時間がかかることもわかるだろう。

大手のメーカーは「ユーザーサポートは更に充実します。」「せめて3回電話をかけていただければ、1回はつながるようにしたいと思います」という発言をしている位だから、ユーザーサポートはますます充実されるだろう。メーカーによっては1年間24時間完全電話サポートやら、1年間オンサイト保証を売り物にしている。

こりゃええこっちゃ。と思うのが普通だが、果たしてそれは正しいのだろうか?

パソコン製造過程を考えると人手が介在している部分は相当少なくなっている。でっかい工場で機械が勝手に部品を作り、アッセンブラーが組み立てをしているわけだ。その理由は、人件費が高いからである。安いパソコンを供給し、競争力を維持するためにはそうでもしないとやってられないという現実がある。そういう努力の結果、消費者である私たちが安いパソコンを享受できるようになったのだ。

しかし、ユーザーサポートはどうだろう。要はパソコンの使い方を知っている人間を一個所にあつめて電話で応対させる作業だ。人件費の安い外国人にやらせる訳にもいかない。サポート担当の教育コスト、家賃、人件費など、コストが無茶苦茶かかる。そのコストをどこで吸収しているのかと考えれば、当然に販売価格に上乗せされるはずだ。

実は今まで私は一度もユーザーサポートとやらを利用したことがない。こういうユーザーもユーザーサポートのコストを負担させられているかと思うと、正直なところ大変不愉快である。それ故、大手メーカーのパソコンは購入しないのであるが。ぜひとも、サポート込みの販売価格とサポート無しの販売価格を分けるなり、ユーザーサポートは別料金と言う具合にしてもらいたい。

パソコンメーカーも、パソコンは単なるハードウェアであって、それをどのように利用するかはソフトの部分であるという原点に立ち返るべきだろう。そうすれば、中途半端な商品しか売れないという現状に対する言い訳も胸を張ってできるわけだし、ユーザーサポートなんていう金食い虫もやらなくても済むわけだ。

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