199700819 of Yasushi's Life


地価の再下落 (August 19, 1997)

不良債権処理に証券化、流動化というキーワードが語られるようになってから久しい。しかしながら、現実のissueを見ている限り、米国におけるS&L処理の中でRTCが行ったような純粋に担保不動産を売り切る形での証券は未だ登場していないようだ。
今までのissueの殆どは債権の売却サイドが償還にあたっての元本返済リスクを購入者サイドに転嫁せず、何らかの形で元本保証がなされているスキームであった。これはとりあえずB/Sから不良債権を外し、最終処理までの時間稼ぎをするだけの商品であり、本当の意味での不良債権問題の解決には何ら寄与しないものであった。

しかし、ここへ来て新しいストラクチャーが登場する気配を見せている。それは、購入投資家が元本の最終リスクまで負うという投資ストラクチャーであり、投資家サイドは自らの手で購入した債権を元に担保売却を行い、ゲインを狙っていくという商品だ。こういう荒っぽい商品を仕組むのは米系投資銀行の十八番であるので、有名どころが目の色を変えて日本の銀行詣でをしているらしい。

商品の詳細をここで議論するつもりは無いが、この類のパッケージが大量、それこそ数千億、兆円オーダーで作られるようになった時に、日本の商業土地の流通システム、言い換えれば不動産仲介というものは、今までのやり方からアングロサクソン流のやり方への変貌を迫られることになると予想する。

また、こういったパッケージを購入する投資家は相当なディスカウントで担保付き債権を購入するわけである。それは担保不動産処分による実際の回収時期までのtime valueを考慮した上でのものだ。従って、投資家は時間と勝負することによって投資リターンを確保することになる。

多少値段は実勢より悪くとも、売却価格が自分の想定したリターンを超えるものであれば、直ちに売却するという逃げ足の速い動きに出るはずだ。今まで不動産市況が低迷しているとは言いながらも、実際の売買が成立せずあくまでも気配値の下げであったところに、こういった動きが多量に出てくれば、間違いなく首都圏商業地の地価は現在の水準よりも更に下落をすることになるだろう。

言い換えれば、担保付き債権を売却した日本の銀行が売却損を計上する事によって、間接的に担保不動産に隠れていた含み損は吹き飛ばされる。そして身軽になった担保物件が、逃げ足の速いアングロサクソン流投資家達によって売り飛ばされ、不動産価格は生産性に基づく適正投資水準まで引き下げられるという流れである。

こういった状況になるまでまだ2、3年の時間の猶予はあるだろうが、必ずや遠からぬ将来に再度商業地の不動産価格は再調整局面を迎えるだろう。

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