Collaboration Organizer (August 20, 1997)
インターネットとパソコン通信を利用して何人かの友人と本の執筆活動を行っている。
忙しい人たちにとっては、電子メールやホームページを利用してブレーンストーミングをし、企画を練り、実際の執筆作業をするというのは大変メリットのあることである。と言うか、電子メール、ホームページなどがなければそんなことやろうとも思わなかったというのがより正確な表現だろう。
この共同作業を通じて感じているのは、ネットワークでの共同作業(Collaboration)をうまいこと進めていくためには今までの共同作業にはなかった様々な手法、能力が作業のコーディネーターに要求されるということだ。
最も必要とされる資質について述べてみたいが、それは論理的な文章を速い速度で書く能力であろう。
ネットワークでの作業は現状の技術水準ではどうしても文字キャラクターに依存したコミュニケーション中心となることから、簡潔で論理的な文章を書けなければチームの方向付けをすることができなくなってしまう。今までの日本における共同作業のコーディネーターが、必ずしも論理的な手法ではなく、往々にしてemotionalなサイドに偏った調整型のVerbalコミュニケーション能力が重視されてきたこととは対照的である。
また作業におけるやり取りの量は、各参加者がコンピューター支援を得ていることから、総じてボリュームが増えがちである。そういった多量なコミュニケーショントラフィックを適切に交通整理するためには、それに応じた速度を以って対応を行うことがコーディネーターには要求される。その為には遅筆な人では困るわけだ。
と、ここまで書いてきて、アメリカにおける仕事の進め方をふと思った。
彼らは書面によるやり取りを基本的なベースとして仕事を進める。多くのホワイトカラーがうなされるようにメモランダム、プロポーザルなどを書き、それを回覧し、自分の考えを具現化して行こうとする。根回しの代わりにメモを回覧するという具合だ。従って、アメリカのビジネスパーソンは「自分の考えを効果的にかつ論理的に速度感を以って文章化する作業」を徹底的に訓練されていると言える。そういう素地があるわけだから、グループウェア導入が成功しないわけはない。
むしろ、もともとグループウェアは、メモランダムの作成、回覧を電子的にやり、知識を電子的に蓄積し、そこから何かを創造していこうというアメリカのビジネススタイルのコンセプトに基づいて作り出されたものと考える方が自然なのだろう。
そうなると、日本でグループウェアが本当に根付くためには、本音は口頭のやり取り、建前は稟議書というシステム自体が変容を遂げる必要があるのだろう。論理的な文章を速い速度で書くといったビジネススキルについて、ほとんどの日本のビジネスパーソンは訓練を受けていない。それが障害となって日本ではグループウェアが十分に定着しないかもしれない。
グループウェアスタイル、日本式スタイルどちらが効果的なものかという判断は簡単には出せない。しかし、少なくとも現時点でホワイトカラーの生産性については圧倒的にアメリカの方が高いということは、グループウェアの効果を示す有力な証拠と言える。
日本のビジネスパーソンが皆書き方教室からおさらいをする日が来るのだろうか?