Ithaca (August 23, 1997)
山形亜裕子さんのHP日記を読んでいたら私にとって大変なつかしい地名がでていた。それはIthaca(イサカ)だ。
残念ながら山形さんご本人にはお会いしたことがないのだが、彼女はテレビ東京でアナウンサーをされていて、伊藤師匠が出演されていた番組を一緒にやっていた方である。更に、世の中の狭さを示す典型のような話だが、彼女の旦那さんが私の会社の後輩で、私と同じ留学プログラムでアメリカのロースクールに現在留学しており、ご夫婦でアメリカ暮らしをしている。
私もアメリカに留学しているときには生活の立ち上げから、学校の授業とさまざまな苦労に直面した。今思えばどれもこれも良い思いでとはなっているが、その当時は大変な思いをしたわけだ。現在アメリカでの生活をスタートすべくがんばっている山形さんの日記を読むとその時のことが思い出されて、不思議と懐かしい気分になってしまう。
そんな中で8月18から20日まで彼女たちはItacaを訪れたようだ。
今の時期はIthacaの町が一番美しい季節だ。この町に住んでいたことがある私が皆さんにIthacaのことを少し紹介してみたい。
Ithacaは人口3万人程度のNY州のほぼ地理的に真ん中(Upper state of NY)の片田舎にある町だ。しかしながら、町の小ささに比べてこの町は結構有名な町である。というのはCornell大学というアイビーリーグの大学がこの町にはあるからだ。私は数年前にそこの大学院で勉強していた。
Cornell大学で有名なのはキャンパスの美しさ、ホテル学科、バイオテクノロジーと言ったところだろうか。もちろんその他の分野でもアメリカのトップスクールであり、何人ものノーベル賞受賞者がごろごろしている。テレビ番組のコスモスで有名な故カールセーガン氏もここの教授だった。contraversialという点で行けば台湾の季総督がCornellの行事に卒業生として参加するためにアメリカへの入国問題が話題になったのも最近では有名だろう。
キャンパスの美しさといっても日本の感覚とは全く違う次元で、たとえて言えば巨大な森林公園の中にキャンパスが点在しているという具合である。広さはビッグエッグ100個以上分あり、構内の施設としてはホテル学科用のホテルから始まり、実験林やら18Hゴルフコース、1万人は楽に収容できるフットボールスタジアム、ホッケーリンク、美術館に音楽ホール、氷河に削られたgorgeと呼ばれる渓谷に吊り橋があったり、発電用のダムもあり、粒子加速装置(サイクロトロン)までキャンパスに設置されている。更に、キャンパスの多くの建物はアイビーリーグの名の通り蔦(アイビー)が絡まる趣ある建物だ。こういった一連の施設がLake Cayugaという氷河によって削り出された幅1キロ、長さ60キロにも及ぶ縦長の湖を見下ろす小高い丘の上に広がっていて、キャンパス全体を一周しようとすれば車でノンストップでも数十分はかかるという信じがたいサイズとなっている。
山形さんも立ち寄られたようだが、学校の中のホテルはスタットラーホテルというホテルである。有名なホテルチェーンオーナーのスタットラー氏にちなんで名付けられている。ホテルの中には有名なホテル関係者の名前にちなんだボールルームがあり、例えばマリオットルームなどと名付けられている。日本では帝国ホテルの犬丸氏がここのホテル学科の卒業生で、もちろんInumaru Roomというボールルームもある。学校の中のホテルと言っても馬鹿にはできず、トップクラスのサービスが専門のスタッフと、世界のホテル運営の幹部候補生であるホテル学科の学生たちによって提供され、快適な滞在が約束されている。ホテル上層階のカユガ湖側の部屋から眺める緑に包まれたキャンパスと湖、そしてそこに沈む夕日は大変美しい。
Ithaca周辺のアトラクションとしては、Lake Cayugaをはじめとする、Finger Lakes(縦長の湖が5、6個まるで指の様に広がっているのでこう命名されている)地方に点在するfinger lakes wineのワイナリー巡り、隣町コーニング(食器で有名なコーニング社の本社がある)での食器買い出し、ちょっと足を伸ばしてナイアガラの滝巡りなどがある。
交通手段としてはニューヨークのラガーディア空港から飛行機で約40分でIthacaの空港に到着できる。車であればニューヨークからは約4時間。アメリカ国内からのアクセスであればUS Airのハブであるピッツバーグからのアクセスが便利であろう。
ブランド品を買い物することもできないし、ミュージカルやライブなどのexcitingな夜を過ごすこともできないが、アメリカのトップクラスの学生たちがどんな環境で勉強しているかを肌で実感し、同時に緑に包まれてのんびりした時間を過ごすにはもってこいの場所である。ニューヨークに旅行するチャンスがあれば、ちょっと足を伸ばしてIthacaの町で2、3日過ごすのも洒落た休暇の過ごし方だとお勧めしよう。
なんだか私も久しぶりにItacaに帰りたくなってしまった。