ホテル (August 9, 1997)
やっと出張から帰国した。今回の出張は4泊6日とまあ私からすると平均的な長さの出張であった。
言いたい放題を継続的にご覧になっている方には私が相当の頻度で出張しているかがよくおわかりだと思うが、だいたい年間1ヶ月は外国でホテル暮らしである。加えてホテルなどに関するファイナンスの仕事をしているので、かなりホテルにはうるさくなってしまう。以前にハワイのファイブスターホテルを紹介したが、今日はハワイのホテル一般について思っていることを書いてみたい。
一言で言ってしまえばハワイのホテル運営はそれほど難しいことではない。その理由は、ハワイのホテルを運営するためには個別のお客の相手をする必要性がとても少ないということだ。本来、ホテルとは宿泊客との間にどれだけ個人ベースの信頼関係を築けるのかが勝負だと思うのだが、そういう勝負がハワイのホテルには存在していない。
ハワイを訪れる観光客はそのほとんどがパック旅行でハワイにやってくる。自分で予約をしてという客は極めて少数派だ。したがってホテルオペレーターがまずすることは大手の旅行代理店あるいはトラベルエージェントと呼ばれる業者と懇意になって、そこへバルクで客室を卸してしまうことである。大体10月後半から翌年度の客室レートなどの交渉が始まるが、大変なのはこの年間交渉ぐらいで、これが済んでしまえば後はエージェントがまとめて客を送り込んでくれる。
こんなに楽な集客をしているところはそうそう無いだろう。普通のホテルはゼネラルマネージャーが世界中を営業のために飛び回り、各地のエージェント、大手の会社などに自分のホテルを利用してもらうべくセールスする。どれだけエンドユーザーとのコネクションがあるかがゼネラルマネージャーの手腕の一部であるといってもよい位なのだ。そんな面倒なこともハワイでは必要ない。せいぜいJTBやら近ツリあたりのお偉いさんと接待ゴルフでもするぐらいだろう。
それから、日本人客が沢山泊まるホテルに大概ろくなホテルは無い。ハワイでは日本人客が少ないホテルを探すことなんて至難の技だろうから、総じてハワイのホテルの接客レベルは低いと言えよう。その理由は簡単である。「日本人はちゃんと文句が言えない」からである。まともに不満を英語で説明することができる人も少ないし、文句を言うにしても感情的になってしまい冷静に文句が言える人もまれである。従って、日本人が沢山泊まるホテルでは、ホテル側は自分たちのサービスの不備をいつまでも知らずに繰り返し、結局サービスレベルは低いままである。
それに加えてほとんどの日本人客はパック旅行で来るので、「このホテルがよかったからまた来よう」と考えて翌年もリゾートするためにそのホテルに行くなんてことはないだろう。「こいつら、どうせ数日間しか泊まらないのだし、また来るなんてことも無いよ」とホテル側も思っているのである。この状況がホテルと客の緊張感を失わせてしまう。
ホノルル空港で「きれいなホテルでよかったねぇ」とか「部屋からダイヤモンドヘッドの眺めがよかったよねぇ」と感想を話している観光客がいるが、もう少し彼らあるいは彼女らがホテルの利用方法を知っていれば、もっとワイキキでの何日かが楽しい滞在になったかもしれない。ホテルはあなたの滞在を快適にするためのプロなのだ。
例えば、ホテルのコンシェルジェは本当に物知りだ。私がバドワイザーのコマーシャルで使われている白いボディコンドレスをホノルルで探した時に手伝ってくれたのもコンシェルジェだ。レストランの予約だって個人でいれるよりもコンシェルジェを通じて入れた方がはるかに良い席を押さえてもらえる。パソコンの故障を直してくれるお店を探してもらったこともある。ルームサービスだって直接頼んでも無理なことだってコンシェルジェを通じて頼めば手配してもらえるかもしれない。
とりあえず、自分がハワイ旅行でしてみたいこと、手に入れたいものをコンシェルジェに相談してみよう。そうすればハワイのホテルも段々と良くなっていくことだろう。