199700711 of Yasushi's Life


大蔵省のハイテク化 (July 11, 1997)

仕事で用事があって官庁街にある大蔵省まで出かけた。3か月ぶりだ。

目指す部署へと上がっていく途中の風景はいつもながらで、廊下には書類が詰まった段ボール箱が山を通りこして壁の様な状態で積んであり、冷房もあまりきかず古い鉄のサッシの窓が開けられている。「よくこれでどこに何があるかわかるよねぇ」と一緒に行った同僚と話をしながら歩いていった。

中庭を取り囲むような建物を約半周して某セクションへとお邪魔する。ここもまた狭い。数十センチしかないキャビネットの横の隙間をすり抜けて、今日用事がある相手の机まで辿り着く。

担当は私達が現われた事も目に入らないようで一心不乱にノートパソコンに向かってキーボードを叩いている。「こんにちは、忙しいところ失礼します。」といって挨拶をし、勧められるままに先方の机の前においてある2つの椅子に腰をかけるが、この椅子も後ろの人の机と貼り付くが如くに置かれているので、身体の大きい同僚と私は身を折り畳むようにしてその椅子に座り、今日の話題についての話をはじめた。ふと見ると彼の机の上もその周りも書類が山のように積まれ、ものすごい有様だ。今までに提出した書類のコピーを持ってきてよかったなぁと、ほっと胸をなでおろす。

用意してきた書類をもとに説明を終え、2、3の質問に答えたところで要件は無事済んだ。実際、最近は昔に比べると話がはやくなった。世間の批判を浴びて大蔵省自体が変化を遂げつつあるのは事実である。

「じゃぁ お忙しい中ありがとうございました。連絡をお待ちしております。」と挨拶をして席をたち、再度狭い隙間を縫って廊下へ出る。他に2、3立ち寄りを済ませて、同僚と大蔵省を出た。

しかし、毎回大蔵省に行く度に感じるのだが、あの労働環境はなんとかしなくてはならないと思う。古くて狭い建物、収まりきらずに廊下に積み上げられる書類、スタンドアロンのノートパソコンやらワープロなど。今どきの中小企業でももっとましなオフィス環境が完備されているはずだ。いくら大蔵官僚が優秀だと言っても、もうすこしオフィスをまともにしないと本当にその優秀さを存分に発揮できないだろう。

世の中をあげてパソコンブームであり、ビジネスの世界はおそろしいスピードでデジタル化の助けを借りて生産性を向上している。ファイリングしかり、検索しかりであり、コミュニケーション方法だってLANやらインターネットが爆発的に普及している。

日本を動かしていると言われる大蔵省のオフィスはそういったものと余りに無縁の様に見えるのは国民として哀しい限りだ。別に贅沢をしろと言いたい訳ではないけれども、建物をもっと大きいものにして、ゆったりとしたオフィススペースを採り、LANを構築し、ファイリングを効率的にすべきだろうし、ネットによる民間とのコミュニケーションをもっと充実させるべきだろう。建物を建て直し、最新鋭の機械を導入したってせいぜい100億円かそこらしかかからないはずだ。

「何ぃ、100億円だぁ」と叫ぶ人がいるかもしれないが、それは大きな間違い。今の日本はその是非はともかくとして、中央官庁が世の中の動き全てに持っている影響力は図り知れないものがある。その中央官庁が最高に効率良く機能して、はじめて世の中もスムーズに回っていくのはずだ。100億円程度で効率がアップするのなら安い買い物として拍手しなくてはならない。

私が一国民として優秀な官僚にしてもらいたいと考えることは、山の様に埋もれている書類を探し回ることでもなく、ワープロで書類を清書することでもない。未来を見据えたビジョンある政策の立案とその効果的な執行である。その一助となるのならば、どこかの田舎に誰も使わない道路を政治家の選挙対策で作るために何十億円も費消するよりは、大蔵省のオフィス環境を国内で最高水準にすることに100億円使った方が納税者としてはありがたいことだ。

更に、オフィス環境を大金を投じて改善することによって、今後進展していくであろう国民への情報開示の動きの中で「書類が見つかりません」と言った馬鹿げた抗弁を封じ込めることができるようになることも事実であろう。

一日も早く大蔵省を頂点とする中央官庁オフィスのハイテク化を勧めてもらいたいものだ。

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