199700713 of Yasushi's Life


夏のビジネスウェア (July 13, 1997)

私はしばしばハワイへ出張するが、その時はハワイのビジネスウェアであるアロハシャツを着てでかける。ワイシャツとネクタイに背広なんて格好は法廷に出る時以外にはしないので、持っていくことさえない。

考えてみればこのアロハシャツ、赤道に近い南の島であるハワイではとても理にかなったものである。常に25度を越える気温のハワイで、夏でも気温の低いヨーロッパ大陸で発達したスーツ、ワイシャツ、ネクタイなどというものを着込む方が不合理極まりない話であろう。

衣服にまず求められることは外部環境に合わせて快適な生活がおくれるという点だ。もちろんデザインや儀礼的な意味も衣服にはある訳だが、自分の住んでいる地域の気候に合わせることが最も重要であることは誰でもわかることだ。日本の真冬にTシャツ1枚で歩き回ることがどれほど奇妙なことかを考えれば、誰もこの考えに異論はないはずだろう。

しかし、不思議なことに「真冬にTシャツ1枚」と同じような馬鹿げたことが日本の夏にはおきている。それはサラリーマンの制服とも言える背広、ワイシャツ、ネクタイだ。

東京の8月の平均気温は約28度。これは区分的には完全に熱帯気候である。更に悪いことに日本の夏は高湿度だし、都心部はアスファルトからの照り返しと都市型気候によって日中の気温は35度以上、場合によっては40度近くにもなる。当然、短パンに半袖シャツとパナマ帽でもかぶって暮らすのが一番快適なはずだ。もし背広を着るとしても、リネンやシアーサッカーと言った吸湿性の高い生地で涼げなものにすべきである。

しかし実際のところは、夏でもグレー、濃紺と言った色の背広を着て、長袖のワイシャツの袖をまくり上げ汗でしわしわにし、だらしなくネクタイをゆるめて汗をかいているサラリーマンの姿ばかりが目につく。電車やデパート、オフィスビルなどの中は背広を着ているサラリーマンのために強力に冷房をきかせており、サラリーマン制服と無縁の女性達は冷え性で苦しみ、長袖の上着、膝掛け、長いソックスで真夏というのに防寒対策に余念がない。エネルギー資源の節約を考えるエンバイロンメンタルコンシャスといった点から考えても、まったく「アウト」な話といえよう。

「何でこの暑い中そんな格好をしているの?」という質問に答えることができる人がいるだろうか。背広を着てネクタイをしていることがビジネスでの礼儀だと無条件に思い込んでいるだけではないのか?もちろんプロトコールは大事なことだが、背広、ワイシャツ、ネクタイ以外の格好をしている人の姿がビジネスの場に現われたら不愉快になるものだろうか?そんなことはないはずだ。私などは背広を着込んでいても、ワイシャツの袖をまくりあげ、汗でよれよれになった背広を着ているだらしない人が現われた方がよっぽど不愉快になる。

例えば、涼げなリネンの半袖シャツと、きっちりとプレスのきいたコットンのトラウザースにパナマ帽なんて良いではないか。シアーサッカーの上下に真白なポロシャツも素敵だ。ビジネスウェアは目立たないことを以て尊しとするが、まずその前に機能的に合理性を追及してみるのはどうだろうか?そしてその中で、自分の個性を発揮してみるともっと楽しくなるはずだ。もちろん、紺色のスラックスにでっかい金のバックル、それから奇妙な色柄のゴルフシャツという没個性的なビジネスマンのゴルフ場での制服はNoGoodである。

なんだか、ビジネスウェアの話ではなくて日本のビジネスの仕方そのものの話になってしまった気がしないでもないが、仕事のできる人ってやっぱりおしゃれにも気を使っているように思うのだ。

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