199700716 of Yasushi's Life


海外サーバー (July 16, 1997)

日経新聞の朝刊に「錯綜する著作権」という連載がある。

テクノロジーの進歩で既存の著作権の枠組みがどういった問題に直面しているかを取り上げた連載であり、あまり新聞に興味を持たない私としても毎日楽しみにしている。

今日の内容は、日米での著作権料の違いが際だっているので通信カラオケのサーバーを海外に移そうという検討をする業者が出てきているというものだ。確かにMIDIファイルを高速回線で送れば著作権料の高い日本にサーバーを置いておく必要は全くないわけだ。それならばいっそのこと著作権料の安いアメリカへのサーバー移住を誰だって考えるだろう。

私のホームページに関するファイルが保存されているサーバーもアメリカに置いてある。「え?メンテナンスはどうやってやるの?」と驚かれる方もいるだろうが、インターネットであれば一旦接続してしまえばネット上のどこであろうとも物理的な距離をほとんど感じることなくアクセスが可能なので全く問題はない。アメリカのホームページを見るときに特に何か感じるわけではないのと同じことだ。

アメリカにサーバーを置いた理由は冒頭に書いた通信カラオケ業者と同じ発想である。私が自分のドメインであるkinoshita.comを取得したのが2年近く前になるが、その当時はまだまだ日本のインターネットプレゼンスプロバイダーの料金は高くて、個人の私には手が出なかっただけである。しかし、その時点でアメリカでは月額20ドルで自分のドメイン名とサーバーを持つことが可能だったのだ。

しかし、この日米の価格差もあっという間に収斂してきた。現状ではほぼ同じ水準までおちてきているはずである。

サーバーの移転の話はほんの一例に過ぎない。多くの識者が指摘しているように、デジタル化の進展はさまざまな物の世界中での価格差を無くす方向に作用している。特に、現代において最も重要な財の一つである情報のボーダーレス経済を想像を越える速度で推進していると言えよう。

デジタル化経済の影響は様々な形で政治、法律の世界の枠組みを揺さぶり始めている。それが著作権概念の見直しであり、アメリカ政府が提唱する国際的なエレクトロニックコマースの規格統一であり、ネット上の言論の自由の線引きの議論である。

私が思うに、揺さぶりに対して世界の多くの国の政府は程度の差はあれ何らかの規制によって既存の体制とのコンフリクトを極小化しようと努力しているかに見える。しかしながら、私たちはデジタル化経済に向けて走りだしたばかりであり、誰もその行く末がどういったものになるのかを想像しえないはずだ。走る速度にブレーキをかけるにはまだ早すぎると思うのは間違いだろうか?

もうしばらくの間疾走してみるのも悪くないだろう。

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