法学部8号館 (June 2, 1997)
奥島ゼミのパーティーのつづき。
パーティーが無事終了した後、ふと思い立って大隈通り商店街を抜け、早稲田のキャンパスを一周した。さすがに土曜日の夜9時過ぎとあって人影もまばらである。
学生の頃行き付けだった雀荘「白孔雀」、何度食事をしたかわからない「ブン」「ボンマルシェ」などもそのままである。キャンパスの中も狭くて、あんまりきれいではない姿は12年前と殆ど変わっていない。サークルで入り浸っていた政経ラウンジもそのままで、私の入っていたサークルが今も同じ場所を陣取っていた。
そのまま足を運び、法学部のある8号館に足を踏み入れる。学費値上げ反対のアジビラがそこここに貼られていて、私が4年生になるときの学費値上げ反対ストライキの個とを思いだす。
掲示板のところまできて、ばったりゼミ同期の2人と出くわした。彼らも懐しさに惹かれて法学部の建物を訪れていたようだ。壁に貼られた大学新聞を読んだり、掲示板の掲示を見ながら、何とはなしに昔話に花が咲く。時計の針をお互い一緒だった12年前に戻せば、会っていなかった時間のギャップはあっという間に埋まってしまう。「じゃぁ 軽く一杯いきますか」と近場の居酒屋でこじんまりした2次会だ。
電気メーカーと電力会社に勤める2人と金融機関に勤める私とは仕事では全く重なることはない。でも、なぜだかわからないけど盛り上がる。自分の業界の話しをしたり、同期の業界について質問したり、仲間の消息を話したり...気がつけば店もかんばんの時間である。
「ゼミをしてた時にこういう付き合いが将来できるなんて思ってもいなかったよ。どこか一緒の体験を共有しあっていて、それでいて損得無い関係っていいね。会社とか仕事とかで知り合った人って結局なんだかんだ言って利害関係がでてくるじゃない。そうなると、知らないうちに格好つけたりして本当に聞きたいこと、知りたいこととか話せないってあるよね。」こんな話しをしながらほろ酔い気分で穴八幡の横を地下鉄の駅に向う。やっぱり人は、同じ言葉で話せ、同じ冗談を笑える道連れを探しながら生きているようだ。
12年前に仕込んだ葡萄の樽を開けたら、芳醇な葡萄酒になっていることがわかったような嬉しい気持だ。早稲田大学という葡萄畑と12年間という時の流れに多謝。