19970504 of Yasushi's Life


内部告発とインターネット (May 4, 1997)

今日の日経新聞の特集は「企業の内部告発増加」だった。

どうも最近内部告発が増えているそうだ。まあ、大企業の経営にも自浄能力が欠落しているので当たり前と言えば当たり前だなと思った次第であるが、最後に面白いことが書いてある。

インターネットのホームページを利用した内部告発というのがあるのだそうだ。これは凄い。今まで内部告発と言えば封書に入った妙な怪文書とかファックスで報道機関に送り付けられる怪文書と相場が決まっていたが、それを根底から覆すような方法である。

なにせホームページなら誰でも見られるし、速報性もある。作るもの簡単だし、会社のワープロで作った資料がそのまま添付できるとなると、もう言うこと無しだ。Microsoft Wordなんぞを使っていれば、もはや内部作成資料がそのままHTMLとなってしまう訳だ。今まで夜中に人目を避けてコピーをして、怪文書を作っていた時代に比べれば、お手軽簡単、更に効き目は超弩級ということだ。

ホームページを載せるサーバーだって日本国内に作らずに、海外に作れば企業側も一筋縄では手出しができない。海外だってアメリカのみならず、世界中でサーバーなんぞはレンタルできるので、それこそミラーサーバーを数カ国に分散しておけば絶対止めることは不可能と言ってもいいだろう。サーバーを止めるために法的措置なんかを取り始めれば告発者の思う壷で、マスコミは大騒ぎを始めて、企業イメージは地に墜ちるだろう。なにせ怪文書と違ってインターネットに接続できればだれでも見れるわけだから。

もっと強烈なのは怪文書を何万通もの電子メールとして発信することだろう。送付先としては対象となる企業の取引先、マスコミ各社、あるいは監督官庁なんかでもいいだろう。後は製品のユーザーとおぼしき対象をパソコン通信あたりからまとめて集めてきて送るというのも結構な打撃が与えられる。普通の手紙ならばこういう具合にはいかないが、電子メールならばこんなこともそれほど手間をかけずに実行することが出来る。送った途端にメールの契約は解約してしまえば足もつかないし、ヘッダー情報をちょちょいと書き換えておけば誰が送ったかも簡単にはわからない。annonymous mail serverを利用すればもっと完璧かも知れない。

後は読んだ人を引き込むコンテンツとその表現方法、最後に問題がpublicになった後のプロパガンタの戦略が問題なだけで、この辺に才能があれば会社の一つや二つに徹底的なダメージを与えることはそれほど大変なことではないだろう。

誤解しないで頂きたいが、私は決してこういった馬鹿げたことを勧める訳ではない。要は企業はこういったリスクを抱えながら経営をしていかなくてはならない時代に突入したということを言いたいのである。総会屋対策に頭を痛めていた総務部門の人間が今度は内部告発のホームページとメール爆弾に怯える日はもう既に現実の物となっている訳だ。

なにぞ後ろめたい話が身に覚えのある企業の経営陣は首を洗って待つのか、それとも英断を以て自浄への道を進むのかの選択を迫られる時代である。賢明な経営者として後者の選択をしてもらいたいものだ。

インターネットは時に抑圧政治を倒す武器として今まで機能してきたが、腐敗した企業経営への抑止力として機能するというのは全く興味深い一致と言えよう。

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