19970516 of Yasushi's Life


ソロス社の東京代表 (May 16, 1997)

ジョンズ・ズワンストラ氏をご存じだろうか?

一部の市場関係者を除けば、普通の人は誰も知らないだろう。彼はかの有名な投資家ジョージ・ソロスのやっているファンドの東京駐在代表だ。

なぜまたこの人の事を取り上げたかというと、毎年恒例の高額納税者の公示で彼が全国で94位に突如ランクインしたのだ。QUICKの報道によると納税額は29、067万円(普通の人にわかりやすく書くと、2億9千67万円)とのことである。

アメリカの金融界では日本人の我々からすると想像を絶する報酬をとっている人間がいるという話はよく耳にしており頭では理解していたが、やはり日本の税務署の発表するデータとして目の前に突き付けられると、理性による理解を飛び越えてただただ驚きという感じである。

その驚きが過ぎ去った後に浮かんできたものは「日本の金融機関は今のままで大丈夫なのだろうか?」という思いだ。

アメリカのfinance関係者にはとてつもなく巨額の報酬という大きな人参が吊る下げられている訳である。実際ズワンストラ氏ほど一年間で報酬をもらってしまえば、それこそフロリダあたりに家を構えて、残りの人生は笑って穏やかに暮らしていける。数多くの優秀な人材がそういった人参を餌に全力疾走を続けているのがアメリカのfinancial industryなのだ。人によってはそれをgreedyだと言うかも知れないが、とてつもなくinnovativeでrevolutionaryでpowerfulであることは間違いない。

橋本総理の提唱する金融ビッグバン ---- そのforerunnerである外国為替管理法の改正が本日参院本会議で可決、成立したが ---- とは、そういった連中とのlevel groundでの競争に日本の金融機関も巻き込まれるという事を意味する。

一方ビッグバンを目前とした日本の金融機関がしていること言えば、理念なき人員のリストラと給料アップの凍結である。確かにバブルの遺産整理の為に必要なことなのかもしれないが、報酬を押さえられた従業員達のモラルは下がることはあっても、高まることはないはずだ。更に、高度成長時代には通用した「将来の出世」「将来の給与上昇」と言った目に見えないものを対価とした勤務体系も破綻を来たしつつあるのも叉事実である。このような状態では本当に優秀な人材は流出してしまう危険性は高く、Hi-Tech FInanceにおけるCutting Edgeを維持することは困難だ。優秀な人材を失った金融機関には海外の金融機関との熾烈な競争を生き残る未来はない。

金融機関で働いていて長者番付に名前を連ねることはできるか?これに対する答えがYesという組織とNoという組織のどちらが、本当に優秀な人材を確保できるのだろうか。もうすぐそれが証明される。

社長の10倍の給料を取るトレーダーがいても良いのではないだろうか。

ページの先頭へ