19970523 of Yasushi's Life


大所高所 (May 23, 1997)

政府系特殊法人の銀行で仕事をしている友人と食事をした。

彼は石油開発関連のファイナンスをしているわけだが、石油開発と言えば日本のエネルギー政策に直結する話しである。やはりやっている仕事がでかい。

当然プロジェクトリスクの分析やらファイナンススキームと言った技術論も重要だが、それよりも更に重要なことは今後のエネルギー政策がどのようになっていくのかという視点である。時には通産省から情報を入手し、あるいは総合商社の今後の業務展開について商社トップレベルからヒアリングをするというような仕事が重要なファクターである。

そこで我が身をふりかってみると。やっている仕事は相当せこい。技術論的にはハイテクファイナンスな取引をしているのでノウハウには自信があるものの、要は海外不動産投資に関するワークアウトをしているわけである。そこには大所高所からの視点などは全く欠落している。

まあ民間金融機関だから仕事内容を政府系金融機関と比較してもしょうがないと言えばしょうがないのであるが。しかし多くの人々が金融機関に対して持っていた信頼というのは、金融機関の公器として存在部分によるところが大きいはずだ。そして金融機関への信頼が失われた理由は、終りを知らぬ収益競争に明け暮れ、投機目的の資金融資に走り、公器としての役割を完全に失念していたからではないだろうか。

金融機関と言えども営利企業であり収益追及は当然であるが、それと同時に様々な業界の未来を取引先と共に語り、有用な情報を提供し、大所高所からの議論を交わし、日本の産業政策の一翼を担うという気概を取り戻さなくてはならない。誤解しないで頂きたいのは、産業界を金融界が指導すべきだというような驕った考え方ではないということである。むしろ金融機関が産業界において自らの身の置き所を探すという作業に真剣に取り組まなくてはならないという意味においてである。

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