真実はどこに
April 24, 1997
日産生命が事実上破綻した。
あまりに唐突な破綻である。もちろん赤字転落をした、あるいは経営が相当困難な状況に陥りつつあるという情報は耳にしていなかった訳ではないが、それにしても唐突感が無いと言えば嘘になる。
大蔵省の説明によれば95年時点で既に1,000億円近い債務超過に陥っていたことを認識していたということであるが、そういった状態で会社の存続を許していたということが私にはどうも納得がいかない。1,000億円の債務超過は十分に取り返すことができるという見通しがあったということだが、これも俄かには信じがたい。
最終的な債務超過額は2,000億円とのことだが、私はこの数字がむしろ曲者であると考える。というのは、預金保険機構の生命保険版が設立されたのだが、この基金が拠出できる限度が2,000億円なのだ。従ってこれ以上の損失が発生した場合には、その損失を加入者に皺寄せせずに対応する枠組みが現時点では確立していないということである。そこで、その限度額にかぎりなく債務超過額が近づいた現時点で破綻というシナリオが描かれたのではないかと勘繰りたくなってしまう。
一般常識から考えて、1,000億円の債務超過に陥った会社がドラスティックな経営改革を行わず、自力で債務超過を脱することが可能であると考えることは狂気の沙汰であり、人様のお金を預かる金融機関が債務超過の状態で3年以上も運営されていたという事実は人々の金融機関への不信感を高める以外の何物でもないだろう。
95年の時点で会社の清算がスタートされていれば少なくとも最終損失額が1,000億円少なくて済んだ公算が高い。しかし現実には95年の時点で監督当局である大蔵省は営業停止処分を実施せず、その結果最終損失額は1,000億円増加することとなった。免許業種でない一般企業ならば絶対ありえない結末である。
人が最も疑心暗鬼になるのは、真実とは何かがわからなくなった時である。金融機関を取り巻く状況は正にそういった状況になってきているような気がする。大蔵大臣がこういった生命保険会社はもはや存在しないと声高らかに述べる言葉は、まるで狼少年の叫びの様に私の耳には響いてくる。