コピーの三田
August 10, 1998
コピー機の三田工業が会社更生を申請した。関係会社分を含めて負債総額約2,000億円。
今回の会社更生申し立て、大変気になることが2つある。
1つは記者会見でメインバンクであるさくら銀行に融資支援を求めたか否かと聞かれて「まったく相談していない」と社長が応えている点。もう1つは会社更生の支援を行うスポンサー(京セラ)があまりにスムーズに登場してきている点である。
前者については、今までの金融常識から考えればグループ全体で190億円近い借入残高があるメインバンクに対しては、普通なんらかの相談事があってしかりである。しかし今回はその常識が通用しなかったようである。社長曰く、今回支援を得ていても必ずどこかで再び危機に直面するので抜本的な対策が必要であり、その為にはまだ完全に破綻する前に会社更生を申請することを選択したとのこと。
不良債権問題や金融システム危機で日本の銀行の体力が大幅に低下し、まさかの時に信用を供与し再建を支援するという日本型メインバンクシステムは既に機能しなくなりつつあるようだ。東食の時にも結局メインバンクが支援しきれず会社更生となったことも思い出される。偶然の一致かもしれないが、どちらのケースもメインはさくら銀行であった。
企業の側から考えれば、まさかの時のメインバンクということで人材の出向派遣を受け入れ、多少の無理も目をつぶってきたが、これからはそんな話も通用しなくなるのでは。
そこで、出てくるのが2番目の点である。新聞報道によれば三田工業の創始者の代から親交があった京セラの稲盛氏のところに相談に行き、支援の話がまとまったということだ。さくら銀行には行かず、京セラに行ったところに多くの経営上の失敗はあったといえ、三田社長の最後のひらめきがあったと私は思う。
銀行の支援は基本的に資金供給と取引先紹介である。もちろん支援に派遣された人が優秀で成功するケースもあるが、多くの場合リストラについては、十分に業界のことをよくわからず理念無き人員削減などが行われる。とは言っても、強大な信用力を背景にした資金供与は会社再建のためには極めて魅力的であったことも事実である。
しかし、先にも延べたように銀行の信用力に陰りがでてきている今、むしろ自分の会社の技術や商圏、のれんといったものを活用しシナジー効果を享受できる信用力ある企業に対して支援を求めるのは当然といえば当然の流れである。
13日決済の手形支払資金の調達ができなかったことが直接の引き金となって会社更生申請となった今回のケースだが、アメリカで言うところのプリパッケージド・チャプター11(pre-packaged chapter 11)と似たものを感じる。
今後、こういった、銀行に支援を求めず、自らスポンサーを事前に探し出し、債務カットで会社更正をめざそうとする動きは大手企業で加速するのだろうと思う。企業の根幹部分が残るという点では高く評価される動きであろう。
但し、メイン先であっても、ある日突然会社更生を申し立てていたという、銀行員にとっては悪夢のような出来事が増えるいうことが増えていくということだ。まったく銀行員にとっては暮らし辛い世の中になっていくものだ。