背広のバッチ
October 6, 1997
会社帰りの電車の中でふとまわりを見回すと背広の襟に会社のバッチをつけた人がたくさんいることに突然気が付いた。
電車の中ではこれといってやることもないので、知っている会社のバッチはないかと思って何人かのバッチを見てみたが、残念ながら一つもわからなかった。私があまり物知りでないということだけなのかもしれないが、いったいこのバッチにどんな意味があるのだろう。
私も会社のバッチを持っていることは持っているが、一体何度つけたことがあるか疑問である。12年間の会社生活でせいぜい数十回程度ではないだろうか。ここ何年かはまったくつけたことが無い。会社の机の中にクリップやボールペンと一緒になって転がっている。ただし、そんなに少ない回数でもしっかり紛失したことまである。情けない限りだ。
まあ、自分の話はさておき。このバッチには「私は**会社の人間です」ということを知らしめるためのものだと考えるのが一番自然だろう。では誰に対して知らしめるのであろうか?取引先なのか、同じ会社の人間なのか?
取引先であれば、別にバッチなんかをつけていなくたって「**会社の人だ」ということはわかっているだろうし、バッチを付けていないからといって取引先にとっては何ら不自由は生じない。新規取引で飛び込み訪問の場合には違うかもしれないが、突如訪問を受けた人間にとってはバッチなんてなんの意味も無い。まず自分で「私は**会社の**です」と名乗って、それから名刺を渡せば済む話だ。
では同じ会社の中はどうだろうか。IDとして意味があるという意見があるが、いつも会社の中で背広を着ているわけではない。ワイシャツだけのときもあるだろう。IDにするならばバッチなんて中途半端なことはやめて写真付きのIDカードを首から常時つる下げておくようにすればよい。
となると、バッチは誰かに対して自分がどこかの会社の所属社員であることを知らせる目的で存在していないと考えるのが自然なのか。むしろ、自分のためにつけていると考えられないか。飼い犬が首輪をするように、「私は**会社の社員です」ということを自分で自覚するためにつけていると考えれば、機能で説明できないことに合点が行く。
とある会社では不祥事が表沙汰になり、社員にバッチをはずせと指示がでたと言った話も耳にする。そんなくだらない指示を出すのならば、いっそバッチなんて廃止してしまえばいいのにと思ったこともある。
でも飼い犬は首輪が無いと落ち着かないんだろうね、きっと。