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反トラスト法


米国司法省がマイクロソフト社に対してOSとネットソフトのバンドル販売は同意審決違反であると提訴を行った。

多くの報道では反トラスト法とひとくくりにされているが、日本の独占禁止法のように包括的な法律があるわけではなくシャーマン法、クレイトン法、FTC法と呼ばれる法律がその主要部分をなしている。

この反トラスト法は大変興味深い法律である。その理由は上で述べた3つの法律の条文が大変少ないことに由来する。条文数が少ないが故に、その解釈が時代時代によって相当揺れ動く。

反トラスト法を執行する機関は司法省とFTC(Federal Trade Commission)であるが、この2つの行政機関が様々なガイドラインやらノンチャレンジングレターなどを発行することで条文数の少なさを補い、現実の法の適用の枠組みを作り上げていく。もちろんこれらの行政機関の判断は法廷で最終的な結論が出されるわけであるが、司法省、FTCの解釈が重要な役割を果たしていることには変りはない。

司法省、FTCは行政機関でありアメリカ合衆国大統領(行政府の長)の支配下にある。となると、当然ながら時の政権の政策、特に経済政策にこの2つの組織の判断は影響を受けることになる、それも極めてはっきりとした形である。たとえばデレギュレーションを推し進めたレーガン政権下にあっては極めて緩和された対応がなされたし、日本などの追い上げにより米国の競争力が低下していると騒がれた局面でも反トラスト法に関する行政判断は緩んだ。

そのため反トラスト法に携わる者にとっては政権の経済政策、米国の経済状況などが極めて重要なファクターとなる。ちなみに、私が反トラスト法を学んだ際の指導教官は法律家ではなくFTCでエコノミストをしていた経済畑出身の教授であった。法律は世の中の動きを後追いするものであり、経済法と呼ばれる分野の法律に携わる者にとっては経済の動きを知ることは大切なことである。しかし、米国における反トラスト法は状況の後追いと言うよりも経済政策の一環と言っても過言ではない。

そういった視点から今回のマイクロソフトへの提訴を考えると

クリントン政権においてはインターネットは政権のキーワードの1つであり、西部開拓時代以来の第2のフロンティアと位地付けられている。

マイクロソフトは極めて高い市場シェアを保有するOSを利用してインターネットをも自らの支配下に置こうとしており、それは成功を収めつつあった。

いったんインターネットが一企業の支配の手に落ちてしまえば、「現代アメリカのフロンティア」「情報スーパーハイウェー」といったクリントン政権を特徴付けてきたキーワードも神通力を失ってしまい、政権への支持確保のためには望ましくない。

そこで司法省による提訴に至った。

というようなシナリオが浮かび上がってくる。この様に考えれば7割近いマーケットシェアを保有する商品が存在する市場でシェア3割程度の商品(インターネットエクスプローラー)のバンドルにめくじらをたてる動きも納得がいくのではないだろうか。