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クレジットクランチ


最近世間では銀行により「貸し渋り」が話題になっている。日銀総裁も定例記者会見で「深刻な事態ではない」という旨の発言をして、暗にクレジットクランチが発生しているということを認めている。

なぜこの様な事態が発生しているのかというメカニズムは以下の通りだ。

新たに導入された早期是正措置による貸出金の自己査定によって貸出資産は「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」と分類し、それぞれの査定に合わせて貸倒引当を行い、銀行の資産の健全性を維持することとなった。

破綻懸念先より悪い先は今までの不良資産処理処理と同じこととして引当処理をやっていけば良いのであるから特に問題にならないのである。しかし「正常先」「要注意先」への貸出に関する引当も一定の倒産率を考慮して行う。特に「要注意先」が問題であろう。「要注意先」とは「業況が低調ないしは不安定な債務者」とされており、赤字企業のほぼ全てがこれに該当する。

「要注意先」に対する一定の引当処理を実施するということは、引当コストが発生するということであり、この追加コスト分を貸出金利に転嫁できなければ銀行の採算は悪化してしまう。

そこで、コスト分に関するレート引き上げ要求を行う、あるいは要注意先への貸出を低採算と割り切って回収するという動きに各銀行が出てきており、今回のクレジットクランチの原因となっているという次第である。

私は以前からバブル貸出というのは決して貸出そのものが悪いとは思っていなかった。リスクに見合うリターン(貸出金利)を得ていなかったという一点のみが問題であったのだ。元本ロスが発生してもそれを補えるリターンを得ていれば経済的に問題は生じない。加えて「プライムレート(最優遇貸出金利)」がその「最優遇」という意味を失い、単に基準金利と化している点も同様に問題であると認識していた。要は日本の銀行の貸出はキャピタルアセットプライシングの理論を無視し、リスクに見合ったまっとうな金利設定がなされていなかったのである。

こういった歪んだ貸出状況を、正常な信用リスクに応じた金利運営へと戻さざるを得ない経営環境を作り出すという点において、早期是正措置とそれに伴う自己査定制度は大変まともなやり方である。また、十分な収益を確保し得ない貸出資産の圧縮ならびに金利の引上げ交渉による収益性の改善を目指すという銀行のアクションも至極まっとうな対応である。銀行は経営の健全性を確保しろと騒がれているご時世でもあり、是非ともクレジットクランチどうのこうのなどという外野の騒ぎは無視して各銀行徹底的に不採算貸出の圧縮を図ってもらいたい。

今までの歪んだ貸出市場を適正化するプロセスでクレジットクランチが中小企業貸出市場を中心に発生することは、早期是正措置の導入を決定した際に十分予見できたはずであり、今更どうのこうの騒いでも後の祭りだ。もちろん、貸出条件見直し、貸出回収といったクレジットクランチの影響として中小企業の倒産増加、景気悪化という流れが強まるかもしれない。しかしそれはそれでしょうがない。金融システムの健全性を維持するためのコストであると割り切るというのが早期是正措置の実施を決定した際の政策判断であったはずだ。

金融行政に携わる方々は、景気対策で右往左往している政治家からのプレッシャーにびびらず、クレジットクランチについては公的機関の信用補完なりで対応しますと返事をして、日本の金融がやっとまともな道を歩み始めた動きを応援してもらいたいものである。