古巣
November 12, 1998
今晩は前の勤め先でお世話になった方々が送別会を開いてくれた。
入社面接の時からお世話になっていた役員、会社生活最後の5年間近くを仕えた部長、最後にお世話になった次長、それから同じ部署で仕事をしていた先輩と私の5人での集まり。退職にあたっては、私の無理とわがままを温かく受け入れてくれた方々である。
新しい会社の話がひとしきり終わったところで、役員からこう言われる。
「木下は武者修業に出すみたいなものなんだ。今は海外の業務とか撤退するけど、何年か先、それが5年かかるか10年かかるかわからないけれども、また力を取り戻し戦線を拡大する日が来る。その時には帰ってこいと呼ぶからな。その時は帰ってきてくれるか?」
「喜んでもどりたいですね。」と答える私。
お世辞で言ってくれたのかもしれないが、自分の古巣のマネージメントがこういう考え方をしているということを知るのは本当に嬉しい。一旦、望ましくないと判断すれば直ちに戦線を縮少し、業務ラインの建て直しを図り、再び攻めに回るときには今まで失った時間を外から調達する。これが今の金融のマネージメントに求められるスピード感である。
今までの中途退職、転職といえば古巣との関係がぎくしゃくするケースが多かった。しかし時代は変りつつある。今まで日本の会社は終身雇用という仕組みで従業員を繋ぎ止めてきたわけで、中途退職者はその網を破る不届き者であったが、その網自体が今破れようとしている中、不届き者という意味は失われつつある。
退職金や福利厚生という経済的なメリットが失われたところに、深くつながる人と人との関係が存在することが浮かび上がる。そして、そういった関係をどれだけ築いているかが、企業の、そしてまた職業人としての強さにつながっていくのだろう。
なんだか心が温かくなった夕べである。