香港テーラー
December 8, 1998
ご存知の方もいると思うが、バブル華やかりし頃外資系の投資銀行や邦銀のディーリングルームなどに香港から出張テーラーがやってきて、ワイシャツやスーツのオーダーができた。バブル崩壊後、すっかり彼らの姿を見ないと思っていたら、最近また香港テーラーの東京行脚が再開されたということをNORIKOさんから教えられた。
それではということで、連絡先を教えてもらい早速オフィスに来てもらう。
生地見本を取り出し、あれやこれやとシャツを選ぶ。生地を選んで、シャツの形を選び、ディーテールを詰めていく作業は一番楽しい。たとえば私はシャツの胸ポケットが嫌いなのだが、これもオーダーでなければ外すことはなかなかできない。世界で一つだけ、自分の洋服ができるという気もちが満足感を与えてくれる。
つづいてスーツの生地を選ぶ。やはりスーツは手触り。とても素敵な生地が見つかって、話を聞くとカシミアが入っているという。私は濃紺やチャコールグレーの無地のスーツばかりを着ているが、柄が入っていない分生地がしっかりしていないと、まるで新入社員のリクルートスーツのような情けない感じになってしまうので、生地選びは慎重にならざるをえない。
30代半ばになると、さすがにいいかげんなスーツを着ていることは許されない。とは言っても、商売柄あまり派手なスーツも困り者である。そんなことを考えながらスーツのスタイルを選ぶ。私の好みは3ボタン、センターベンツのトラディショナルシェイプ。ズボンは2プリーツ、裾はダブルである。腕丈の長さは完全に趣味の世界だが、ワイシャツがフレンチカフスの多い私は気持ち長めが好きなので、普通より5ミリ位長くしてもらう。PDAを入れることが多い左胸のポケットは型崩れを防ぐために若干大き目にしてもらい、補強を入れてもらった。こういった細々した注文にも応えてもらえるのはありがたい。何せスーツを着ている時間が一番暮らしのうちで長いのだから。後は採寸して終わりとなる。
この間わずかに30分。これでワイシャツ8枚とスーツ2着を注文し終わる。今シーズンはこれで十分だろう。
忙しいと落ち着いてスーツやワイシャツを選ぶこともままならないが、こうやってオフィスまでやってきてくれて、採寸までしてくれると本当にありがたい。更に値段自体も日本でオーダーで作る値段の半分である。下手をすれば気の利いた既成服よりも安いかもしれない。消費者の気もちをしっかりつかめれば、ついつい財布の紐が緩むことの好例ではないだろうか。