米国における貸手責任(Lender's Liability)回避に関する実務の手引き

ニューヨーク州弁護士  木下 泰


Table of Contents

  1. 読者レベル

  2. 貸し手責任を巡る法理

  3. ローン交渉

  4. ローンコミットメント

  5. ドキュメンテーション

  6. ローンの管理

  7. リストラクチャリング

  8. INDEX


I  読者レベル

執筆にあたり読者層としてイメージしたレベルは米国関連のファイナンスをある程度の期間行った経験があるローンオフィサーが自分の業務手法を再度見直すにあたっての指針として用いるといった物です。従って初学者あるいは全くの実務経験の無い方には専門用語の内容がわからないと言った不満もあるでしょうし、純粋に法律論文的な視点から見た場合には論理構成などで甘いという批判を受ける点や判例等の引用が無いという指摘あると思いますが、読者レベルを決定する観点から止むを得ないものと割り切っております。

II 貸し手責任を巡る法理

 ここ何年かのあいだアメリカにおいて貸し手責任(Lender Liability)とい う言葉が銀行員達を震え上がらせてきました。

 資金を融資しておきながら借入人から訴えられるなんて不合理な話しがある ものかという怒りの声が聞こえてきそうですが、裁判所がそのような判決 を下しはじめたのですから指をくわえて見ているわけにはいきません。対応と してはまず最初に貸し手責任というものは何に基づく責任なのかを知らなくて はいけません。

 それでは一体どんな法理に基づいて貸し手責任が問われたのでしょうか?判 例法を重視するアメリカでは「貸し手責任に関する法律」という明文化された 法律があるわけではありません。判決として様々な法理の適用が蓄積されて貸 し手責任に関する法分野が確立されてきたのです。その代表的なものを上げて みましょう。

  1. Breach of Contract(契約違反)
  2. Breach of Implied Covenant of Good Faith(善良義務違反)
  3. Fraud (Misrepresentation)(詐欺、瑕疵ある表示)
  4. Joint Venture(共同事業)
  5. Tort(不法行為)
  6. 連邦環境法等による責任


以下にそれぞれについて説明を加えます。

Breach of Contract(契約違反)

 貸し手と借入人の間に成立した契約内容を貸し手側が違反したことに起因す る責任。主として実務上問題になるのはローンコミットメントの不履行による 損害賠償請求であります。論点としてはローン交渉時の口頭による大筋の合意 がローンコミットメント契約の成立を構成するか否かという点が挙げられます。

Breach of Implied Covenant of Good Faith

 アメリカ法上、全ての契約は当事者が善意に基づいて公正に取引を行なうと いう黙示的な制限条項(implied covenant)を含んでいると解されています。従って、契約当事者の行為が善意に基づかない不公正なものであると見なされた場合には黙示的な制限条項の違反となり違反者は相手方に対して損害の賠償義務を負うことになります。なにをもってして違反があったと見なされるかについては次回以降の具体例の際に取り上げていきます。

 都合の悪いことに州によってはこのimplied covenantの違反が単に契約違反 とされるばかりではなく、不法行為(Tort)であると解され懲罰的損害賠償(*1)が課せられる危険性があります。

*1懲罰的損害賠償(punitive damage)  不法行為の内容が悪質であった場合に、懲罰的な意味合いを含め実際に発生 した損害の数倍にも及ぶ賠償をさせること。賠償額は通常陪審員によって決定 されるためどの程度の金額になるかは予測不可能である。

Fraud (Misrepresentation)

 貸し手の発言に詐欺的な表示あるいは間違いがあった場合、借入人がそれを 信じて行動を行なったことに起因する損害に対する責任。これも不法行為責任 の一種であります。従って悪質な場合には上記の懲罰的損害賠償の対象となる 危険性があります。

Joint Venture

 貸し手が借入人の事業の経営判断について影響力を及ぼした場合両者の関係 が単なるローン契約に基づく関係以上となり実質的に共同事業をおこなってい ると解されること(パートナーシップの存在が擬制される)により、借入人が 負っている経営上の責任を貸し手が共同して負担することを要求されることで す。それと同時に他の債権者との関係において当該貸し手のローンがパートナ ーズローンであると解され担保権等の優先弁債権が否定される可能性がありま す。

Tort

 その他前述の不法行為以外の不法行為例えば、名誉毀損、優越的地位の利用 による妨害等も貸し手責任の根拠となります。

連邦環境法等の責任

 ここで重要な連邦法として取り上げられるのがComprehensive Environmental Response, Compensation and Liability Act ("CERCLA")であります。

 この法律は汚染物質(例えばアスベストなど)が存在する物件の所有者ある いは管理者(owner or operator) が当該汚染物質を除去する責任があることを 定めた法律であります。この法律の所有者あるいは管理者の定義によれば物件 上に担保権を有する貸し手は除外されておりますが、担保権の行使によって貸 し手が物件の所有者となった場合、貸し手が所有者の経営をコントロールした 場合は貸し手もCERCLAにおける責任を負うことを義務づけております。

 したがって、担保権を設定する場合に当該担保物件の環境調査 (Environmental Survey)が大変重要になってきます。

 これ以外の連邦法上の責任としてあげられものがRacketeer Influenced and Corrupt Organizations ("RICO")およびMail Fraudがありますが特に重要な問題点ではないことから説明は省略します。

III ローン交渉

 通常ローンの手順は

  1. 借入人との間で貸出条件を巡って交渉が行なわれ、
  2. それがローンコミットメントレター(融資確約書)として締結され、
  3. 最終的にローン契約書の調印と
  4. ローンの実行という順番に沿って 行なわれます。

それではまず貸出条件を巡る交渉に留意しなくてはならない点を中心に話しを進めていきます。

ローン交渉を行なうにあたっての大原則は「嘘はつかない、誇張はしない、できないことは言わない。」であります。

 当たり前のことを今更の様に言ってというご批判があるかもしれませんが、 いつでも基本に立ち戻ることは実務においては大変重要なことです。少なくともこの大原則を 順守していればBreach of Contract(契約違反)、Fraud(Misrepresentation) (詐欺/瑕疵ある表示)という借入人からの訴えには反論することが可 能です。

 どうしても成約させたいローン案件で長い時間をかけて交渉事をしていれば 必ず一つや二つグレーだと思うことでも、交渉のモーメンタムに負けてつい言 ってしまうことがあるはずです。

 必ずしもその一言が決定的な要因になるということはありませんが、その他 の証拠と複合されることによって貸し手側の責任を立証するために使われてし まう可能性があることを心に留めて交渉に臨みましょう。

どんな発言が問題となるのか?

 いくつか実例を挙げて考えてみましょう。

  1. 「弊行は不動産プロジェクトではかなりの経験を持っております。私どもがこのプロジェクトは絶対間違いないと太鼓判を押しますよ。」

     この発言には2つの問題があります。

     1つはあなたの銀行が本当に不動産プロジェクトに相当の経験を有している のか否かということです。もしあなたの銀行が不動産プロジェクトでの相当の 経験(expertise)がなければ、これは瑕疵ある表示(Misrepresentation)となり ます。経験がないことを承知の発言であれば詐欺(Fraud) とも取られかねません。

     もう1つはプロジェクトに絶対間違い無いということはありえません。もし プロジェクトが失敗した際に「経験のあるプロのおたくが絶対間違いないって いったから、それを信用したのに」と借入人から言われたらどのように抗弁し ますか?この世の中に絶対ということはありません、「絶対大丈夫」「絶対問 題ありません」というような発言は大変危険です。

  2. 「なにか問題が起きたらなんでもおっしゃってください。我々がついておりますから心配いりませんよ、最後まで面倒見させていただきますから。」

     本当に最後まで面倒を見るつもりがなければこんな発言も危険です。場合に よっては「最後まで面倒を見る」ということはローンを継続し続けること、あ るいは不足資金まで面倒をみること取られかねません。最悪の場合はいつでも 資金を引き上げることを念頭にいれて交渉を行なってください。

  3. 「我々を仲間だと思ってください、一緒にやっていきましょう。」

     銀行と借入人は共同事業者ではありません。この発言が決定的な要因となる ことは考えられないものの、その他の状況も鑑みて銀行と借入人が共同事業者 (Joint Venture)であると判示される可能性も否定できません。

     銀行と借入人が共通の利益(interest)を持つのは、言い換えれば「銀行はロ ーンを増やしたい」「借入人は資金を工面したい」というお互いの利害が一致 するのはローンの実行まででしょう。最終的にトラブルが発生したときには、 「銀行は資金回収をしたい」「借入人は資金を返したくない」というように両 者の利害は全く相入れないものとなります。

     将来にわたって守れない約束は上記の大原則どおり口にしてはいけません。 銀行のローンは出資(エクイティー)ではないのです。

まとめ

 交渉時点での発言は最初に述べたようにそれ自体で貸し手責任の根拠となる ことは極めて稀であります。しかしながら、取引全体を包むセンチメントとい うものは交渉の時点で大方決められといっても過言ではありません。したがっ て交渉での不用意な発言が将来トラブル発生時に当該取引全体を不公正なもの (unfair, bad faith) に思わせてしまうという危険性を内包しているというこ とに留意する必要があります。

 基本的に借入人にとって有利に聞こえる発言は銀行にとっては貸し手責任の観点か ら見れば危険な発言です。「多少は甘い言葉でもささやかなければ営業なんて できないよ」という営業サイドの声が聞こえてくるかもしれません。ですが、 それはあくまで営業トークであって実際に履行されるはずもありません。でき ないことを言って取引を成立させることが一番問題を引き起こすのです。繰り 返しになりますが公明正大な交渉を心掛けることが重要です。

 借入人が理性的な判断を下せるのプロであればそんなおいしい話しが簡単に 転がっているはずもないことは簡単に理解できるはずです。逆に言えば甘い言 葉に釣られて取引をするような先は到底プロといえるような先ではないはずで す。そのような取引先とは取引をしないというのも一つの見識 なのではないでしょうか。

IV ローンコミットメント

 ローン交渉の話を致しましたが、交渉が煮詰まってくると いよいよローンコミットメントレター(融資確約書)の調印ということに なります。

 ほとんどの金融機関ではコミットメントレターを締結する段階で実際の 融資と同じ内容の稟議がなされることになります。その理由としてはコミ ットメントレターを発行することは実際に融資したこととほとんど同じ意味を 持っているからです。

 基本的には一度コミットメントレターをだしてしまえば貸し手側が融資 を断ることは極めて困難であります。コミットメントレターだからいいだろう、 などと軽く考えると大変な結果を生じることがあります。

 それではこれからコミットメントレターに関しての問題点を説明してい きましょう。

  1. 口頭での主要項目についての合意がコミットメントと見なされる可能性があるか?

     アメリカの契約法では契約を構成するにあたっての重要点が明確に合意 されており、約因(Consideration) が存在すれば、口頭の契約であったと しても当該契約は有効に成立します。またConsideration が存在しない場 合でもその口頭での合意を契約の相手方(すなわち借入人)がその合意を 合理的に信じて何らかの行動を起こしていた場合には起こした行動の範囲 において契約は成立したと見なされます。これはDetrimental Relianceと言います。

     従って口頭の合意であろうとも十分に コミットメントと見なされる可能性がある訳です。この危険性を回避する ためには口頭での交渉を行なったらすぐに議事録を作成し、論議された内 容を整理し相手方に送り付け、「論議の内容はあくまでも交渉のためのも のであり、決して契約として拘束力を持つものではない(issues discussed are only for discussion purpose and not binding.)」 ということを確 認することが重要です。このような議事録を作ることを習慣付けることは 言った言わないの議論を回避するうえでも極めて有効です。

  2. どの様な内容をコミットメントレターに盛り込めばいいのか?

     取引にとって重要なことは全て盛り込まなくてはいけません。この時、 忘れてはならないことがどんな条件が成就すれば貸出を行なうかというこ とです。「このような条件がそろったらローンを行なう」ということを明 記しておくことによって借入人からのコミットメントレターに基づく融資 要請に対して「条件が成就していませんのでご融資はお断りします」とは っきりと抗弁できるようになります。さもなくば前述のとおりコミットメ ントレターを覆すことは極めて困難ですから、融資をせざるを得なくなっ てしまいます。

     具体的には以下のようなものが考えられます。

  3. 貸し手を守るための条件

     コミットメントレターは無条件で融資を実行するものではありません。 普通幾つかの条件が満たされたときに融資が実行されるようになっており ます。

     では貸し手側を守るためにはどのような条件を入れることが望ましいの か、又条件が満たされないときにはどのようにして融資実行を断ればいい のでしょうか。

  4. どのようにして融資謝絶するか

V ドキュメンテーション

 さてローンコミットメント(融資確約書)まで話が進んでまいりまし たので、融資契約書の作成についての総論的なお話をしたいと 思います。その後、各論として貸し手責任を引き起こす危険性のある具体的条項 について述べていきたいと思います。

 貸し手責任の観点から考えますと余程理不尽な契約内容(例えば明確に貸し手 が経営を支配するような条項等)でないかぎり契約書そのもが貸し手責任を引 き起こすことは考えにくいと言われております。むしろ契約条項をどのように 履行させたかという方法が問題になることが多いと言われております。

 英語の契約書と言うと、膨大な契約書をイメージする方が多いと思い ますが、そう言った契約書は法律事務所を儲けさせて、将来問題を引き起こすもとに なるだけです。難しい単語を使わず極力簡単で簡潔な契約書を作りましょう。 契約当事者が理解できないような契約書を作っても何の意味もありません。

 自分で内容がわからないような契約書を使ってしまうと、実際には契約書上 デフォルトが起きていたとしても当事者が誰も気づかないことが起こったりし ますし、貸し手が取らなくてはいけない手続きを忘れてしまったりします。そ んな時に不利になるのはデフォルトが発生しているにも係わらず何にもアクシ ョンをおこさない貸し手になってしまうのです。

  1.  その他の契約作成に当たっての総論的な留意点を以下に述べていきます。

  2.  さてローン契約の作成において総論的に貸し手責任の観点から留意 すべき点をのべて参りましたが、具体的な条項の検証に入りたいと思 います。

VI ローンの管理

残る話題はローン管理とワークアウトであります。ではローンのクロージング後の管理についてご 説明しましょう。

  1. ファイルは整理整頓しておくこと。

     ローン契約書は当然のこと、関連する書簡(ファックスも含む)を綺麗に ファイルしておきましょう。何らかの問題が起こった場合に頼りになるのは 自分で持っているファイルだけです。相手との訴訟を開始したり仲裁を行っ たりする作戦の立案の第一歩は関連ファイルを全部読み返すことから始まり ます。長期に渡るローンですと担当者も何人も変わっていき、取引の経緯が 全くわからなくなってしまうことがあります。この際にファイルがしっかり していれば少なくとも取引の流れだけはファイルを読み返すことによって新 任の担当者は把握することが出来ます。

     裁判では口で言った、言わないということの立証は極めて困難であります。 従って借入人とのやり取りは基本的に全て書面に残すようにしましょう。例 えば電話で話をした後なども「先日の電話での会話の内容をまとめたメモラ ンダムであります。内容にご不満があればご連絡ください云々」という記録 のためのレターを作成して送付し、そのレターをファイルに保管しておくこ とが重要です。

     但しその際に書面の内容については注意して作成してください。感情的な 表現や相手を脅かすような表現をした書面が残ってしまうことによって将来 その書面が貴方にとって不利に働く可能性もあります。やり取りの書簡は将 来誰が見るかわかりませんので、実務的に無駄を排した書面にすることを心 掛けましょう。

     また、一旦訴訟が開始されると裁判手続として証拠品開示(Discovery)によって借入人側(裁判上の相手方)からファイルの提出等の書類提出(Production of Documents)が要求されます。この証拠品開示にあたっては訴訟を前提とした弁護士とのやり取り、あるいは弁護士が作成した書類等は弁護士顧客秘匿特権(Attorney Client Privileged Communication)あるいは弁護士作業秘匿特権(Attorney Work Product)として開示が免除されます。従ってこの特権をうまく利用して書類作成を行っておけば将来万一訴訟になった際にも相手方に与える情報を減らすことが可能です。

  2. 信用照会

     借入人に関する信用照会(credit inquiries)があるときがあります。基本 的には貸し手側には回答する法的な義務は全くありません。(契約書などで 別途規定されている場合は除く)ですからリスクを回避するという意味にお いては「守秘義務の関係上、回答いたしかねます。」あるいは「ノーコメン ト」という回答がベストと考えられます。

     しかしながら実際のビジネス上「ノーコメント」という回答はややもすれ ば「ひどくて回答できない」という予見を相手側に与える恐れがありますの で、留意してください。その際に「私どもでは一切お答えしないこと を方針としております」などという説明を加えれば、上記のような予見を防 止することも可能です。

     それと同時に借入人に対して信用照会があったが、それに対して回答を行 ってもよいか否かの確認を行い、回答を行うということが考えられます。こ の場合は借入人側は多少なりとも良い回答をして欲しいという気持で回答の 内容について色々と注文を付けたりするでしょうが、これは一切考慮せずに 客観的な意見を述べるべきであります。但し、回答の内容については借入人 に対して通知することが望ましいでしょう。

     一旦、信用照会に回答することを決断した場合には、信用照会を行ってき た相手方に対して真実を開示するという義務が発生しますので、重要な事実 などを省いたり、誤った情報などは提供しないように客観的な情報のみを提 供するようにしましょう。その際に、相手方がなぜ信用照会を行ってきたか という理由を確認することによって誤った情報が伝わることを防げることも 留意した方が望ましいです。

     対応をまとめると、(1)基本的には回答しないように心掛ける(2)万 が一回答する場合には借入人の同意を得てから、全ての情報を開示するよう にする、ということです。

VII リストラクチャリング

 普通は期日に全額完済となってローン取引は終了いたしますが、不幸にしてトラブ ルが起こってしまったローンをどうやって取り扱っていくか(即ちどうワー クアウトしていくか)という内容を最後にお話ししましょう。

 利払いが滞りそうだ、何らかの形で借入人から訴えられた、期限になって も返済が見込めない、という様な状況になった場合、現状のローンの内容を 変更したり、相手方からのアクションに対して対抗措置をとるなどの作業を ワークアウトと呼びます。

 ワークアウトで重要なことは一度ローンがおかしいという兆候が現われた ならば、現行の担当者(含むライン)から当該ローンの担当をはずしワーク アウト専門の部署(ワークアウトオフィサー)への移管を行うことでありま す。、ローンを行った当事者は(1)自分の失敗を認めたくない傾向にあり 様々な処置が手遅れになる公算が高い、あるいは(2)借入人との関係上思 い切った措置がこうじられない(3)ワークアウト自体が通常のローンより も遥かに専門的な知識を要求されること等が移管の主な理由であります。

 日本の銀行でこのようなワークアウトチームを持っているところは極めて 数が限られますが、外銀などは、一旦利払いが滞ったあるいはデフォルトが 発生ということになると自動的にワークアウトチームへローンの担当替えが なされることが一般的であります。

  1. 新規のトラブル案件に対してワークアウトオフィサーが通常行う手順を以 下に示します。

    1. 全ファイル(契約書、稟議書、書簡、担当者の手持ちファイル他)を読み返す。

    2. ローンに係わった全当事者から取引経緯などの事情を聴取する。

    3. 事情を聴取する際に契約書に規定された取引内容以外の取引(例えば、払い込みが遅延した利息を何の警告もなしに恒常的に受け入れてきた事実、短期のころがり資金であれば継続を口頭で確約していたような事実等)がなされていたか否かを中心に聴取する。

    4. 旧担当を含めて役割分担を明確にし、借入人側との交渉の窓口を一本化する。(旧担当者に借入人から連絡が行ったりしてコミュニケーションが混乱することを防ぐため。)

    5. ワークアウト専門の弁護士を雇い、それまでの経緯などを説明する。

    6. 借入人および関連当事者(例えば保証人など)を集めて事情を聴取する。この際に相手方も弁護士を雇ったうえで面談を行うように書面にてアドバイスを行う。(貸出人側のみが弁護士を連れていくことは裁判などで不利に働く恐れがあるから。)

    7. 対応方針を決定する。(例えば、抵当権行使、リスケに応じる、和解を行う等のおおまかな方針。)

    8. 実際の作業(交渉の開始、契約書の準備、訴訟の準備等)を開始する。

     ワークアウトに於ては初期ステージでの対応が問題解決に至るまでの最も 重要な部分であります。最初の対応が混乱したものであった場合、その混乱 を収束させて問題解決に至るためには相当な労力が必要とされます。問題発 生から非常に短時間で状況を分析して対応方針を策定することが要求される などワークアウトチームには常に大きなプレッシャーがかかることも事実で あり、弁護士、会計士などのプロのサポートを十分に用意することが望まし いと考えられます。

     旧担当から過去の関係云々といったような話が蒸し返されることが常に ありますが、債権の保全及び回収を第一義として、感情に流されず淡々と手 続きを進めることがもっとも重要なポイントであります。従って組織的にも 旧担当から分離された独自の権限を持つ部署がワークアウトを担当するこ とが望ましいとされております。

  2. ワークアウト交渉過程におけるポイント



INDEX (ALPHABETICAL ORDER)

(本稿了)